『悪魔の辞典』アンブローズ・ビアス

2020.05.11 Monday

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    アンブローズ・ビアスの『悪魔の辞典』は、タイトルに『悪魔』と付くくらいですので、その内容は辛辣と風刺、毒舌・誹謗中傷で飾られています。

    最初に『悪魔の辞典』を読んだのは中学生の頃でした。当時は難しい言い回しや、キリスト教ベースの内容がわからず、読むのに四苦八苦した覚えがあります。

    しかし、それでも万国共通で理解できる内容もあり、その辛辣さとユーモアが大好きでした。
    今読んでも当時の風俗や流行、やはり聖書ベースの部分は読解が難しいのですが、昔よりも理解ができるようになりました。

    また、昔から変わらないもの、権力や恋愛、結婚、に関する記述は今読んでもニヤリとしてしまいます。




    貴族
    (中略)野心を持つアメリカの金持ちの娘たちのために、自然が用意してくれているもの

    イギリスドラマ「ダウントン・アビー」でも、グランサム伯爵夫人はアメリカの大富豪の娘でしたから、あながち間違ってはいないのでしょう。

    銀行預金
    銀行を支えていくために行われる慈善の寄付

    これは今でも変わりませんね。更に昨今は窓口にいくと投資まで勧められるので、下手をすると資産を減らすどころか、本当に慈善の寄付になりかねないので注意が必要です。

    恋愛
    一時的な精神異常だが、結婚するか、原因から遠ざかれば簡単に直る

    だからといって、結婚をすればいいかというと、もちろんそんな風には書いてありません。

    結婚
    「(中略)一人の主人と一人の主婦と、二人の奴隷とからなり、それでいて全部合わせて二人にしかならない状態」

    なんのこっちゃかわからない文ですが、それだけ複雑ということなのかもしれません。

    誕生
    「あらゆる災難の中で、最初に訪れる、最も恐ろしい災難」

    これはもう…、ビアスの辛辣さ全開ですね。ただ、ビアスは息子を亡くしているので、その悲しみを災難と例えたたのかも。いやでも、そんなきれいごとではないか…。


    アンブローズ・ビアスという人


    アンブローズ・ビアスという人は、「ニガヨモギと酸をインキがわりに用いた」と言われていました。ニガヨモギはハリー・ポッターにも登場するハーブで苦味があることで知られています。それくらい、辛辣だということでしょうね。

    この人の人生は、彼の著作以上に波乱万丈で、家族との不和、家出、戦争体験、離婚…、最終的には「失踪」で消息を断っています。

    作家の中には早世したり、自殺したりする人も多いですが、「失踪後、行方不明」というインパクトの強さは、最初に読んだ子供の頃から今でも忘れられません。

    ちなみに『悪魔の辞典』の『失踪』の項目には
    「不可解に行動すること、他人の財産を持ち逃げするときに使う」

    と記述されていました。

    派生作品


    調べてみると、悪魔の辞典の派生作品は今でも出版されているらしく、筒井康隆さんの翻訳本や池上彰さんの政界バージョンまで、さまざまなものがあるようです。

    ビアスはジャーナリストでもあったので、池上さんのジャーナリスト視点の「悪魔の辞典」は面白そうですね。

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