おいしいフレンチミステリ、復活。『マカロンはマカロン』近藤史恵

2016.12.24 Saturday

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    ようやく、待ちに待ったビストロパ・マルシリーズの続編『マカロンはマカロン (創元クライム・クラブ)

    ミステリーというには、あまりにもやさしく、暖かい物語の数々。どの物語も、テーマとなる料理があり、そのどれもが美味しそう。料理を味わうように、物語を楽しめます。

    装丁も、フランス料理のメニュー風に、フランス語と日本語で書かれています。

    マカロンはマカロン (創元クライム・クラブ)

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    以下、気になったものの感想を。

    マカロンはマカロン


    三舟シェフは、偶然再会したシェフ仲間の先輩、羽田野さんから、一緒に店に来たパティシエールの岸辺さんがあるお菓子とメッセージ「マカロンはマカロン」を残して姿を消したことに相談を受ける。

    店に来た時、彼女のメイクや香水を注意したからではないかと(香りに敏感な料理人はメイクも香水もしないため)、羽田野さんは心配するが、それに対する三舟シェフの答えは…

    日本でマカロンというと、色鮮やかなかわいいお菓子ですが、本番フランスでは、地味な色合いや、形も様々なバリエーションのマカロンがあるそうです。
    日本で出回るマカロンは、マカロン・パリジャンという一種類なのだとか。


    色鮮やかなマカロンばかりがもてはやされる。それを、若く女性が着飾った状態になぞらえて示す三舟シェフ。

    料理界もですが、世の中まだまだ男性上位な世の中ですし、若くてきれいな女以外は女ではないと感じることも多いですから。

    タルタルステーキの罠


    牛の生肉を使ったタルタルステーキ。特に妊婦には寄生虫トキソプラズマの感染の可能性があるため、細心の注意が必要なメニュー。ある時、「タルタルステーキをメニューに載せて欲しい。」という風変わりな予約が入る。やがて現れた女性客2人は、タルタルステーキを注文するが、姑と思われる女性が、妊婦にタルタルステーキの一部を連れの妊婦に分け与えてしまい…。

    せっかくの料理が、何らかの陰謀に使われたのでは、と落ち込む高築くんでしたが、一ヶ月後、予約した女性が一人で現れてタルタルステーキの真相を語ります。三舟シェフの「人が憎まれるなら、タルタルステーキが憎まれた方がいい。」というセリフがいいです。

    三舟シェフは、単に料理をつくるだけでなく、お客さんに最高のかたちで提供し、喜んでもらえることを心情としているのですね。だから、ビストロ・パ・マルは居心地のいい空間なのでしょう。ああ、パ・マルに行ってみたい…(;´Д`)


    ヴィンテージワインと友情


    ビストロ パ・マルに若いグループが来店し、次の予約の際に、ワインの持ち込みを依頼される。やがて、グループのひとりの女性が高級なワインを持って現れる。その女性・嗣麻子の家は裕福らしく、ワインも家のものを持ってきたという。

    それを快く思わない遙香という女性は嗣麻子を嫌い、彼女のワインの持ち込みを非難するが、実は…。

    友情は難しいものです。聞き心地の良い言葉だけを言っていても、裏では相手を蔑んでいる友人と、嫌なことは嫌だとはっきりという友人。そのどちらを選ぶのは自分次第。

    レストランではワインの持ち込み料金をを抜栓料というのだとか。こんなシステムがあったこと、初めて知りました。けれども持ち込みワインはつい飲みすぎてしまうらしいので、ご用心を。

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    ビストロ パ・マルシリーズ


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    レビューポータル「MONO-PORTAL」
    コメント
    こんばんは。
    またこのシリーズの新刊が出てきて嬉しかったです。
    どのお話も一癖も二癖もある物ばかりで読み応えがありました。
    個人的に好きだったのは再婚相手と息子さんのお話でした。きっとこの家族は上手くいくだろうなとほのぼのして読み終えました。
    最後の話は近藤さんらしかったです。人間関係って本当に難しいですよね。いい年になった今でも環境が変わるたびにドキドキしますし^^;
    • by 苗坊
    • 2017/04/12 8:55 PM
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