O・ヘンリーといえば、ニューヨーク 「O・ヘンリー ニューヨーク小説集」

2015.09.30 Wednesday

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    こんな本を待っていたのです。「O・ヘンリー ニューヨーク小説集 (ちくま文庫)」は、O・ヘンリーの小説の中で、ニューヨークを舞台にしたものを厳選し、当時の時代背景や風俗などの解説文が加えられています。

    普遍的なテーマと、時代背景


    100年ほど前のアメリカ、都市部ではショップガールやタイピストなど、女性の社会進出がはじまり、女子の教育も盛んになってきた頃です(あしながおじさんも20世紀初頭)。ショップガールが玉の輿に乗るため、客の男たちを選んだり、タイピストだけでは食べていくのもカツカツだったり、当時の女性のリアルな姿が描かれます。

    このあたりは時代が変わっても、女性の本質をついているので、読んでいて違和感はないのですが。それでも、コニーアイランドという遊園地が当時から庶民向けの遊園地だったり、そうした背景を知っていると、より作品に深く入り込めます。


    翻訳の妙、解説の発見


    今回、この本の翻訳をしたのが戸山翻訳農場というO・ヘンリー作品の翻訳とその時代背景を紹介しているユニットで、物語ごとに訳者が異なります。今まで、O・ヘンリー作品は、数種類の出版社のものを読んできましたが、翻訳によってこんなにも違いや個性がでるものなのだなあ。と驚きます。

    「魔女の差し入れ」(オールドミスが恋愛妄想の果ての親切心で、逆に不幸になる話)は、以前「善女のパン」という真逆のタイトルでも読んだことがあります。まあ、読んでみるとこのタイトルでも納得なのですが。

    「ハーレムの悲劇」という作品は、この本を読むまでずっと、アフリカ系アメリカ人夫婦の話だと思っていました。でも、解説を読むと、O・ヘンリーがこの作品を書いた1900年代初頭は、ハーレムはまだ、白人の居住区だったそうで、その後、住宅の供給過多による価格低下でアフリカ系アメリカ人が住むようになったのだとか。

    そんな時代背景、普通の翻訳ではなかなか読めませんよね。

    まあ、物語そのものは「夫が、妻のことを理解してくれない」という、現代でも通用する話なのですが。

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